自己破産や債務整理の〝いろは〟についてゼロから学ぶ借金解決サイト
特定調停の管轄裁判所top
Top自己破産債務整理その他 関連知識Q & A
自己破産だけは絶対にしたくない!という方の借金整理法として〝特定調停〟と呼ばれる制度があります。

特定調停のメリットやデメリット、一連の流れについては、特定調停の基礎知識の項で説明していますが、簡単に言ってしまうと、裁判所(通常は裁判所が選任した調停委員が仲裁にあたる)に間に入ってもらいながら、当事者(債権者・債務者)の話し合いにより、解決を目指す債務整理のことです。

そのため、一般に弁護士等の法律専門家が代理人として行う任意整理とは違い、原則として申立人が手続きを行うことになるため、債務者自身で調べなければならないことは沢山ありますが、特定調停を行う上で、最初に押えておかなければならないルールのひとつに申立先(管轄裁判所)の問題があります。

そこで、特定調停の申立先はいったい何処なのか?

これだけは押えておいておきたい管轄に関する基礎知識について、まとめておきます。




特定調停の管轄裁判所に関する基礎知識

自己破産や民事再生と同じように、特定調停の申立先も裁判所となりますが、裁判所ならどこでも良いというわけではありません。

日本国内には、最高裁判所を頂点とする5種類の裁判所(高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所、家庭裁判所)があり、それぞれの裁判所によって扱う事件が異なったり、法律で定められたルールに従って役割を分担しているのです。

では、特定調停の管轄裁判所ははどこなのか?ということになりますが、その点については、民事調停法で規定されており、簡易裁判所に申立てるのが原則です。

しかし、一口に簡易裁判所といっても、全国各地に438か所も設置されているため、簡易裁判所に申立てればよいだけと言われても、困ってしまうことがあります。

そこで、実際に想定される例を挙げながら、もう少し具体的な話をしていきましょう。
矢印Q1.特定調停の申立先は簡易裁判所ならどこでもよい?

矢印Q2.複数の借入先があった場合の管轄裁判所はどこ?

矢印Q3.同じ会社でも支店や営業所がある場合はどうする?

矢印Q4.借入先の所在地(住所)が分からない…

矢印Q5.借入先の住所は分かるけど、管轄裁判所が分からない…

特定調停の申立先は簡易裁判所ならどこでもよい?
民事調停法第3条には次のような規定があります。
調停事件は、特別の定めがある場合を除いて、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所若しくは簡易裁判所の管轄とする。

【民事調停法 第3条】
したがって、簡易裁判所なら、どこでも構わないというわけではなく、債権者(相手方)の住所(所在地)を管轄する簡易裁判所に申し立てをするのが原則です。

例えば、東京都港区に事務所を構える金融業者を相手に特定調停を行う場合は、管轄である東京簡易裁判所(東京簡裁の民事調停は墨田庁舎)が申立先にななります。

しかし、条文にも見られるように、例外として、双方(申立人と債権者)に合意がある場合は、任意で相手方の所在地以外の地域を管轄する簡易裁判所(地方裁判所でもOK!)を選択することも可能です。

つまり、東京都港区に事務所を構える会社であっても、お互いに納得しているなら、東京簡裁ではなく、大阪の簡易裁判所に特定調停の申立をすることも可能だということです。

ただし、任意の簡易裁判所で手続きを進める場合は、管轄合意書を作成して提出しなければなりません。
複数の借入先があった場合の管轄裁判所はどこ?
債務整理を行わなければならないような方は、複数の借入先があり、多重債務に陥っているケースが多々あるため、特定調停の相手方が必ずしも1社とは限りません。

そのため、東京や神奈川、大阪にそれぞれ事務所を構える複数の会社を相手に特定調停を行うような場合は、いったいどうすれば良いのか迷ってしまいます。

民事調停法に従うなら、東京、神奈川、大阪の管轄裁判所である簡裁にそれぞれ別々に申立てることになりそうですが、それでは手間も時間も掛かってしまい、手続きが遅々として進みません。

そこで、複数の借入先があった場合には、次のようなルールが設けられています。
チェック複数の債権者がすべて同じ管轄内になるケース

矢印管轄裁判所が同じ場合は、複数の債権者が存在しても、1社1社申立てる必要はなく、一括で手続きを行うことができる。

チェック各債権者の所在地が全国各地に存在するケース

矢印通常は借入先の数が最も多い会社の所在地を管轄する簡裁(例:A社・B社は東京、C社は千葉、D社は大阪の場合…東京)。もし、借入先の会社の所在地を管轄する裁判所がすべてバラバラなら、借金額が最も大きい会社の所在地を管轄する裁判所が一般的(例:A社100万、B社50万、C社30万の場合…A社)。
なお、実際問題として、金融業者の多くは大都市に集中しているため、東京や大阪に会社を構える債権者がいるような場合は、東京や大阪の管轄裁判所に申立てれば拒否されることはないと思われますが、大都市圏の簡裁は、地方に比べて取り扱っている事件数が膨大なため、手続きが長引くこともあるということを押えておきましょう。
同じ会社でも支店や営業所がある場合はどうする?
お金の借入先が大手の金融業者だと、全国展開していることが多いため、本社の他に各地に支店を構えていることも十分考えられます。

このようなケースでは、本社でなければならないという規定はないため、申立人が手続きを行いやすい借入先の会社がある所在地(本社、支店など)を管轄する簡易裁判所に申立てれば問題ありません。
借入先の所在地(住所)が分からない…
全国各地(438か所)に点在する簡易裁判所には土地管轄というものがあり、どの場所(土地)の裁判所が担当(管轄)するのかというルールが定められています。

特定調停は、民事調停法で定める「相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所」に申立てるの原則なので、手続きを進めるには、まず相手方(債権者)の会社の所在地を知る必要があります。

手元に契約書(金銭消費貸借契約証書)などがあれば、通常は会社の住所(所在地)などが記載されているため、直ぐにチェックすることができますが、契約書を紛失してしまったり、どこに保管したのか分からなかったりすると直ぐに確認することができない場合もあります。

全国展開しているような大手の金融業者なら、スマホやパソコンを使えば簡単に調べることができますが、ホームページを開設していない会社であると、所在地を直ぐに確認できないことも考えられます。

そういう場合は、金融庁ホームページ内にある「登録貸金業者情報検索サービス」というツールを利用してみるのも一法です(ただし、違法な貸付けを行っている無登録業者、いわゆるヤミ金融などは検索できません)。
借入先の住所は分かるけど、管轄裁判所が分からない…
借入先の住所は判明しても、申立先となる管轄裁判所が分からないという人もいるはずです。

そういう場合は、裁判所ホームページ内にある「裁判所の管轄区域」というウェブページにアクセスしてみてください。

同ページには、国内に存在するすべての裁判所に関する情報が掲載されているため、特定調停の申立先となる簡易裁判所の管轄エリアを簡単に調べることができます。





特定調停の管轄に関する例外規定:自庁処理とは?

特定調停は、民事調停法に規定されているように、債権者の住所や所在地を管轄する簡易裁判所に申立てるのが原則であると繰り返し説明してきましたが、実はこのルールを無視(といっては乱暴な言い方ですが…)する裏ワザ(?)があります。

それが〝自庁処理〟とよばれているものです。

自庁処理とは、本来、土地管轄権がない裁判所に特定調停の手続きを認めることで、特定調停法第4条に基づく例外的なルールと言えるでしょう(民事調停法第4条1項にある「事件を処理するために〝特に必要がある〟と認めるときは…」に比べて要件が緩和されている)。
裁判所は、民事調停法第四条第一項 ただし書の規定にかかわらず、その管轄に属しない特定調停に係る事件について申立てを受けた場合において、事件を処理するために適当であると認めるときは、職権で、土地管轄の規定にかかわらず、事件を他の管轄裁判所に移送し、又は自ら処理することができる。

【特定調停法 第4条】
そのため、法律上は必ずしも土地管轄権のある簡易裁判所でなければ特定調停の手続きは行えないというわけではありませんが、自庁処理はあくまで例外規定なので、裁判所によって対応が異なるようです。

しかし、債権者の会社の所在地が遠すぎて管轄裁判所に行く交通費が馬鹿にならないにもかかわらず、相手方が管轄の合意に応じてくれないような場合には、申立人が住む最寄りの管轄外の簡易裁判所にダメもとで自庁処理を願い出てみるというのも一法かもしれません。

なお、申立人が自庁処理を求める場合は、特定調停に必要な他の書類とは別に「自庁処理上申書」を作成して提出しなければなりません。
自庁処理のメリット・デメリット

チェック相手方の所在地を管轄する簡裁が遠い場合、近くの簡裁で手続きが進められる!

チェック債権者側にとっては不利益となるため、調停がスムーズに進まなくなる恐れがある…

チェック自庁処理は簡裁によって対応が異なるため、必ずしも受付けてくれるとは限らない…
特定調停がスタート(施行:H12.2.17~)してから、かれこれ15年以上経ちますが、当初は債務者にとって利用しやすい制度として注目され、申立件数は右肩上がりに増えていきました。

ところが、開始から4年後の平成15年をピーク(537,071件)に、その後は減り続けており、平成24年には、ついに1万件を下回るほどになっています。
特定調停:利用者数の推移グラフ
利用者がこれほどまでに減少してしまった背景には、やはり調停の成立件数がほんの一握りで極端に少ない(全体の10%にも満たない)ということが大きく影響していると考えられますが、債務者の状況によっては、特定調停を利用した方が都合が良いケースも考えられるため、自己破産以外の方法でなんとか借金問題を解決したい!という強い意志をお持ちの方は、検討してみる価値はありそうです。